もはある日記

岡山県の西端で、英日翻訳をしています。ここに「も」ステキなもの「は」いっぱい「ある」よ!

読書中:『Translation Quality Assessment』

今読んでいるのは、『Translation Quality Assessment』という翻訳品質評価の本です。

本書は、ドイツの言語学者、翻訳学者である著者 Juliane House が 40 年にわたる翻訳研究の集大成として、翻訳品質評価についてまとめたものです。

 

研究者による著作なので、内容は学問寄り。実務に生かそうと思って読む本ではありません。一通り読んで面白いなぁと思ったのですが、学者の名前や論文があれこれと登場するので、それは誰?それは何?な箇所の多いこと。繰り返し使われているキーワードは、いわゆる「学術用語」なので、翻訳学の基礎的なところを学んでから読み直した方がよいだろうなということで、今は翻訳学について日本語で書かれた本を読んだり、引用されている論文に当たってみたりしながら、じっくり腰を据えて読み直しているところです。

 

良かったポイントは、①翻訳品質評価に関するさまざまな学者のアプローチが紹介され、批評されており、品質評価研究の歴史を一通り知ることができる点、②実際にサンプルの原文と訳文を示して、翻訳品質評価を実演している点です。

 

期待とは違った? のは、翻訳業界の品質評価とはずいぶん趣きが異なるところでした。

会社ごとに品質評価方法は異なるでしょうが、翻訳業界では JTF 翻訳品質評価ガイドラインのように、誤訳、訳抜け、用語選択など、あらかじめ用意されている項目を 1 文ずつチェックして、減点式で翻訳にスコアを付けるのが一般的でしょう。

一方、本書で実演している方法では、原文と訳文のさまざまな側面 (文の複雑さ、用語選択、etc) の equality (等価性) に着目して、1 文ずつではなく文章全体をまとめて評価しています (もちろん、1 文を取り出して評価することもありますが)。

翻訳業界の品質評価は 1 文単位で定量的に行っているのに対し、本書の品質評価は文章全体を見て言葉によって定性的に行っているという違いがあるのです。

 

また、文芸作品と実務文書の両方を同じ基準で評価しようとしているところも本書の興味深い点でした。

実務翻訳では、マニュアル、マーケティング、字幕…など翻訳対象によって、あるいはクライアントの好みや予算によって、求められる訳・良いとされる訳が異なるので、文書ジャンルごとに評価基準が違うということもままありますよね。

 

…さて、本書の内容についてはざっと読んだだけで、精読はまだなので、誤ったことを書いていたら申し訳ないです。読み終わったら改めて感想を書きたいと思います~