今回のブログは賛否両論ありそうなタイトルを付けてみた。
「読みやすい文章はセンスが 9 割」と思うに至ったきっかけは、『言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術』という本。
本書は、コピーライターである筆者が感じた「仕事で接する文章が長くて読みづらい」という問題への処方箋だ。伝えたいことを書き漏らさないようにあれこれ盛り込んでいったら、メールやプレゼン資料といったビジネスの文章が長く、読みづらくなってしまう。そこで役立つのが、必要な内容を取捨選択する「言葉ダイエット」のスキルであり、このスキルは身に付けることができる――。
紹介されている手法は、一文一意、1 文あたりの文字数を少なくする、抽象論禁止、修飾語禁止、カタカナ語禁止など、シンプルで読みやすい文を書くにはそうするべきだよね、というものばかり。大いに同意。Before/After の例も説得力がある。確かに、これらの手法は練習すれば身に付きそうだ。
しかし、難しいのは「自分が書いたこの文章、もっと読みやすくできるんじゃないか?」と気づくことではないだろうか。文章を書き終えて達成感を味わっているとき、伝えたいことを十全に盛り込んだのに、そこに削るべきものがあるだなんて、思えるだろうか。
例題を解いていくと「言葉ダイエット」のスキルが身に付いたように感じる。確かに、スキルを使えるようにはなるだろう。でも、それは「これは読みにくい文章ですよ」と示された文章に対してスキルを発揮できるだけにすぎない。
自力で読みやすい文章を書くには、スキルを適用すべき対象を判断する能力、つまり、ある文章が読みやすいのか読みにくいのかを判断する能力 (センス) がなければならない。
このセンスがあれば、読みにくい文章を書いてしまったとき、文章の欠陥に気づいて何とかしようと思うはず。もっと文章をブラッシュアップできるかどうかの判断はセンス次第。これが、「読みやすい文章はセンスが 9 割」と考えた理由だ。
さて、そこで問題となるのが、自分にセンスがあるのかどうかだ。
自発的にこの本を手に取った人は、十分にセンスがある (あるいは、センスを身に付ける見込みがある) だろう。自分の文章には改善の余地があると考えて、文章を良くしようとする意識があるからだ。
一方、センスがない人はどういう人だろうか。いろいろなケースが考えられるので、一概にこうだと断じるのは難しい。が、自分にセンスがあるかどうかを判断するのは簡単だ。文章がうまい知人に自分の文章を見せて判断してもらえばよい (文章がうまい知人がいなければ、文章能力かかわらず複数の知人に評価してもらえばセンスがありそうかどうか概ねわかるはず)。
もし、センスがなかったらどうすればよいだろうか。
センスは磨くことができる。これに尽きる。
本書では、「ビジネス文書が読みにくい理由のひとつに、優れたお手本を目にする機会が少ない」と指摘する。「読みやすく書きたいなら、読みやすい文章にふれなくてはいけない」ということで、最終章ではさまざまな読みやすい文章の実例を挙げて解説を加えている。少量の実例を読んだところで、センスが一気にアップ!することはないが、添えられた解説から、今後どのような勉強をすればよいかの指針を得ることができるだろう。