もはある日記

岡山県の西端で、英日翻訳をしています。ここに「も」ステキなもの「は」いっぱい「ある」よ!

実務家が理論を学ぶべき理由

先日、『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む〜プリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで〜』という本を読みました。

本編が面白かっただけでなく、番外編として掲載されていた著者とゴスペラーズ北山陽一さんの対談もとっってもよかったので、紹介させてください。

 

北山さんは現在 SFC で大学院生をしていて、たまたま著者の授業をとったのがきっかけで今回の対談が実現したとのこと。対談のテーマは、「音声学と歌」。すでに音楽のプロとして活動している北山さんが音声学を学ぶことで、プロとしての活動にどんな影響があったのかが語られます。

 

私たちは、音声学を学ばなくても、しゃべったり、歌ったりと、声を出すことができます。プロになる人はさらに上手に声をコントロールする (しかもそれが感覚的にできる人が多い) わけですが、そこに音声学の知見が加わるとより精緻なコントロールが意識的にできるようになる、精緻なコントロールが求められるプロこそ音声学を通じて発声のメカニズムを知っておくべきだ、というのが北山さんの意見です (雑なまとめなので、詳しくは本書を読んでください!!)。

 

北山さんの例は音声学の知見が声の仕事に生かせるというものでしたが、この対談を読みながら、他の職業でも理論を実務に活かせる事例が多々思いつきました。

 

例えば、画家やイラストレーターにとっての解剖学や配色理論だったり。プログラマーにとってのコンピューターサイエンスだったり。

解剖学や配色理論を知らなくても絵は描けます。コンピューターサイエンスを知らなくても、プログラミングはできるでしょう (私もプログラミングをしますが、ちゃんと勉強しておらず、ほとんどコピペです汗)。しかし、プロとして仕事をするには理論を知らなければならない、理論なくして高度な応用はできない、というのが長く仕事を続けているプロの意見ではないでしょうか (Yahoo 知恵袋やら、Twitter やらで、大学に行くか、OJT でスキルを身に付けるか悩む若者に対し、理論を学ぶことをお勧めする意見をよく見ます)。

 

では、翻訳者が学ぶべき理論とは何でしょうか。

どのような翻訳にも共通で役立ちそうな学問をピックアップしてみました。

  • 外国語を読む、訳す … XX 語学、翻訳論
  • 辞書を選ぶ、辞書を引く … 辞書学
  • 情報を探す、検索する … 図書館情報学
  • 分かりやすい/読みやすい文とは何か … 認知科学

外国語の読み書き、辞書引き、資料の調査など、専門的に学ばなくても感覚的にできる翻訳者が多いとは思いますが、これらの理論を学んでみると案外新しい発見があるかもしれません。