もはある日記

岡山県の西端で、英日翻訳をしています。ここに「も」ステキなもの「は」いっぱい「ある」よ!

音声読み上げソフトを考慮した翻訳

先日、NHK の『サラメシ』を見ていたら、鳥居健人さんという全盲の方が登場していました (『サラメシ』、テレビで取り上げられることは基本的にはないであろう会社の仕事風景が見られるので、好きなのです)。

 

鳥居さんの仕事スタイルで驚いたのは、パソコンの音声読み上げソフトの使い方です。

読み上げ速度がめちゃくちゃ速い!!そうやって使っているんだ!!と。

 

私は仕事で翻訳している対象は、Web サイト、Web テスト、E ラーニングなど、パソコンを使って読むことが前提のコンテンツが大半です。クライアントによっては、読み上げソフトを通じた利用に配慮するように指示があるので (といっても、Alt テキストに関する指示程度ですが)、読み上げソフトユーザーがどのようにパソコンを利用しているのかに興味があったのでした。

こうやって使っているんだ、というのがわかると、どんな配慮が必要になるのかの考察が深まりますね…。

 

総務省のページには、音声読み上げに配慮したテキスト表記方法がまとめられています。書き言葉では省略表記で問題ないものも、読み上げソフトに通したときに意図通りに読み上げられないかもしれない…という意識は必要ですね。

www.soumu.go.jp

¥5,000→5,000円、(月)→(月曜日) なんかの書き換えは、スタイルガイドで決めてしまってもよいのではないかしら。

 

YouTube を探すと、実際の使用方法を紹介した動画がいくつか見つかりました。

www.youtube.com

 

全盲だと聴覚が鋭くなる…というよりは慣れの問題だそうですが、慣れるとこんなに速く読み上げても聞き取れるの、っていう例。

www.youtube.com

 

普段、自分が訳すうえで気を付けている点は、

①何度も読み直さなければ理解できない文を避けること。これはそもそも、読み上げソフト云々に関係なく、物書きとして気を付けなければならない点ですね。でも、翻訳していると、原文につられて難解な文になりがちなのです…。

②読点の有無で意味ができるだけ変わらないようにする。「大きい猫の絵」という句で、「大きい」のは「猫」と「絵」のどちらでしょう。読点を入れて「大きい、猫の絵」とすれば、「絵」を修飾しているのだろうと考えられますが、読み上げソフトで読み上げてみると読点の有無の差がよくわからなくなってしまうことがあります。「猫を描いた大きい絵」とか、「猫を大きく描いた絵」とかにした方が意図がよく伝わるかもしれません (簡潔さとのトレードオフがあります…)。

 

文章を見直すとき、誤字脱字がないか、文がわかりにくくないかを確認するために、読み上げソフトに読み上げさせるという手法があります。これは、アクセシビリティに配慮した文を書くうえでもかなり有効なのですよね。

Windows の場合、もともとインストールされている「拡大鏡」アプリを使って、簡単に読み上げさせることができます。

sologaku.com