もはある日記

岡山県の西端で、英日翻訳をしています。ここに「も」ステキなもの「は」いっぱい「ある」よ!

盛り上がりを感じる産業字幕翻訳 ~第30回JTF翻訳祭聴講中~

本日は『動画時代の翻訳 ー産業字幕翻訳は怖くない!』を (録画で) 聴講しました。

私もときどき産業字幕翻訳を引き受けることがあるため、楽しみにしていたセッションです。

 

産業字幕翻訳に関するセッションは第29回の翻訳祭でも行われています。2 回連続で産業字幕翻訳をテーマにしたセッションがあるとは、産業字幕翻訳に対する需要の高まりを感じます (第29回翻訳祭の産業字幕翻訳セッションの感想はこちら)。

 

第29回で産業字幕翻訳セッションを担当されたのはワイズ・インフィニティの方で、映像翻訳専門の会社が考える産業字幕翻訳の手法に関するお話でした。

一方、第30回を担当するのは十印の菊地大悟さま。産業翻訳専門の会社が産業字幕翻訳にどう取り組んでいるか、ということで第29回とは違う視点からお話を聞くことができました。

 

発注企業、産業翻訳会社も必聴

このセッションの想定聴講者は主に翻訳者ですが、ソースクライアントや翻訳会社の方にもぜひ聞いていただきたいセッションです。

企業が字幕翻訳を依頼しようと思ったとき、既に利用したことのある (産業) 翻訳会社がある場合、同じ翻訳会社に依頼するのが一般的ではないでしょうか。そんなわけで、ある日突然、字幕翻訳の経験がない企業と翻訳会社が手を組んで字幕翻訳に取り組むこともありうるわけです。

そこで、本セッションで触れられていた、受注する際のチェックポイント (字幕の用途、範囲、スタイル、スクリプトの有無など) は、翻訳者が留意すべきなのはもちろんですが、発注者と翻訳会社が話し合っておくべき (話し合っておいてほしい) ポイントでもあります。受注時にきちんと認識を統一しておくことでその後スムーズに仕事が進むかどうかが決まるといっても過言ではありません…。既に字幕翻訳で試行錯誤している産業翻訳会社のプロセスを聞くと、自分のプロセスに何が欠けているのかもわかって非常に参考になりました。

 

第29回のセッションと比較して驚いたのは、映像専門の翻訳会社と産業専門の翻訳会社とでは字幕制作に対するアプローチがかなり異なることです。

スクリプト 1 つとっても、ワイズインフィニティではスクリプトを書き起こす専門の担当者が存在する一方、十印はいない (のでソースクライアントに提供を依頼したり、翻訳者が対応したり)。

ツールも、字幕翻訳用の STS を使うのか、産業翻訳用の CAT ツールを使うのか。

産業翻訳者に依頼するときは、「動画もちゃんと見よう!」という注意喚起が必要な人がいるとか (映像字幕専門の人にはそんな注意全く要らないですよね?)。

このような違いは、どのような翻訳会社に字幕翻訳を依頼すべきかを検討する際に、発注企業が知っておくべきではないでしょうか。また、産業字幕翻訳をやろうと考える翻訳者が登録先を選ぶ際にもポイントになるでしょう。

 

質問したかったこと。

リアルタイムで聴講して質問したかったことが 1 つあります。

作業工数の見積もりと単価についてです。

字幕翻訳は、動画を見ながら作業をしなければならず (スクリプトが正しく書き起こされているか、字幕表示タイミングのチェックなど)、字数制限があるために推敲に時間がかかります。一般的なドキュメントの翻訳よりも作業時間がかかるのではないでしょうか。

しかし、産業翻訳系の会社から受注すると、ドキュメント翻訳同様 CAT ツール必須でワード数ベースの報酬体系となることがほとんどです (しかも、単価はドキュメントと一緒)。手間がかかるならその分なんらかの形で報酬に反映されるべきなのですが…

翻訳会社がソースクライアントから受注するとき、どのように工数を見積もって単価を設定しているのかぜひ知りたいものです。翻訳者は字幕翻訳を受注することで単価アップできる可能性はあるのでしょうか?

 

産業字幕翻訳に関するセッションはまた是非開催していただきたいです!