10/24 は第 29 回翻訳祭に参加してきました。
今年も MT 関係のセッションが多かった (印象) ですね。
翻訳会社に勤めていたときだったら MT セッションに参加したかもしれないですが、自分の仕事に直接的に役立ちそうなものを! ということで、MT 以外のセッションをチョイスしました。
最も期待していたのが最初のセッション「産業字幕翻訳の可能性」です。
最近の産業字幕翻訳トレンドに関して翻訳会社がどのように感じているのか + 産業字幕翻訳のベストプラクティスが知りたかったのです。
セッションの内容はおおよそ以下の通り。
・産業字幕翻訳とエンターテインメント字幕翻訳の違い
・産業字幕翻訳が増加傾向にある理由
・産業字幕翻訳に求められるスキル
・字幕翻訳のルール (1 秒あたりの文字数、使用できる記号など。産業字幕とエンタメ字幕では異なる)
・字幕翻訳ソフトの紹介
・字幕翻訳のプロセス
産業字幕に関する現場の声を聞けたのがよかったです。特に、産業字幕ではクライアントごとに字幕のカスタマイズが必要なことについて。クライアントとの話し合い次第で 1 秒あたりの字幕文字数は任意で字幕が 3 行になっても OK、クライアントの希望に応じてできる限り正確に多くの情報を字幕に入れる、というのはエンタメ翻訳の方向性とは異なっており、字幕に関する書籍やインターネットからは得られない情報でした。字幕制作のプロからこの話を聞けただけで、セッションに参加した甲斐がありました。
個人的にも、産業翻訳分野で字幕翻訳が増えているなー、というのは最近よく感じています。私が請けている仕事では、5 年前にはテキスト + スクリーンショットだったトラブルシューティングドキュメントが、最近はどんどん動画に代わっています。プログラミングのチュートリアルなんかも。
いろいろな会社 (ソースクライアント) から産業字幕翻訳の依頼がありますが、ソースクライアントと翻訳者の間に入っているのが IT 系翻訳会社の場合、通常のドキュメント翻訳と同じプロセスで進んでいくので、それで本当に良いものが作れるのか? と悩むことが常々あります。
指定の CAT ツールを使用、スタイルガイドはドキュメント翻訳と同じ (またはエンタメ翻訳用)、作業期間の見積もりと支払いはワードベース…。ソーステキストはソースクライアントが自動生成したと思しきもので、誤記が多数 (特に固有名詞) 。字幕の表示タイミングは英語字幕の表示タイミングから変更不可など。思い通りにいかないことが結構あります。。。
このセッションでご講演くださったワイズ・インフィニティさんでは、きちんと社内で映像から字幕用の原稿を作成していて、クライアントとも字幕翻訳について話しあって字数制限などの仕様をどうするかを決めているとのこと。
産業翻訳サイドから映像翻訳でのプロセスを聞いていると本当にうらやましいかぎりです。産業翻訳系の翻訳会社でも、映像翻訳の知見を活用して何とかプロセス改善できないものですかね?