もはある日記

岡山県の西端で、英日翻訳をしています。ここに「も」ステキなもの「は」いっぱい「ある」よ!

他の業界の学び方に学ぶ (2)

先日の記事「他の業界の学び方に学ぶ」では美容業界の人材育成方法に関する本を読んだが、今回は建築業界の勉強方法に関する本。

 

 

建築学生向けに、プロになるための勉強法がまとめてある。

今後 (プロになっても) 勉強を続けていくうえで必要な建築学の位置付けや、現場で協力することになる技術者にはどのような役割の人がいるのか、いろいろな建築会社のスタイル、施工プロセス、相談できる業界の先輩の見つけ方、プロなら読んでいて当然な基本書籍や業界雑誌の紹介、現場で使われているソフトウェアの紹介、ポートフォリオの作り方、etc. と、学校での学びとプロの仕事 (勉強) の橋渡しとなるハウトゥが満載の自習指南書だ。

あくまで「勉強法」に焦点を絞っており、専門性が高い知識の話はないので、建築門外漢でも、建築家ってこんな勉強をしているんだ!と楽しく読める (ちなみに、私がこの本に出合ったきっかけは建築関係の翻訳を依頼されたから)。

 

読みながら考えたのが、この勉強法を翻訳業界に当てはめるとどうなるか?ということ。

例えば、学問について。翻訳学という翻訳を取り扱った学問はあるにはあるものの、日本の翻訳業界では、この本で取り上げられている建築学のように体系化が進んでいてマストな知識になっているとは思えない。というわけで、私も翻訳学をまったく学んでいないわけだが、ISO の資格要件としてや、国によっては翻訳者になるために学位が必要だったりするわけで、翻訳学を学ぶことでどんな効果があるだろう、と多少の興味が出てきた。

それから、実務でかかわることになる翻訳会社の各担当者の役割や実際に翻訳をする前後のプロセスの知識。これを知っていると、レビュアーに「分かりやすい!」と褒められる申し送りが書けたり、翻訳以外の煩雑な処理 (会社によっては文書のレイアウト調整は後工程でやるから翻訳者は気にしなくて OK) で悩まなくてよくなったりする。翻訳会社で働いていた経験からすると、翻訳後の行程がよりスムーズに行えるよう配慮できるかどうかは翻訳者ごとに結構個人差があるので、付加価値の付け所ではないかと思う。

相談できる先輩の見つけ方というのは、Twitter、ブログ、飲み会、勉強会、イベントなど、本書のとおりそのまま翻訳業界にも当てはまる。なるほどどの業界も同じ方法なんだなーと思いつつ。業界紙にイベントや勉強会の情報なんかは載っていても、「相談できる先輩を見つけるといいよ」というアドバイスまではなかなか載ってないかも?と思って関心した。(これは『独学大全――絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』に載っている「私淑」と一緒かな?)

 

…と、こんなかんじで、他の業界のお勉強の本ながら、得られるところはかなりあったのでした。翻訳でも同じようなコンセプトの本が出ないかしら?