今年に入ってマーケティング系の案件をいただくことが増えました。これまでメインでやっていたマニュアルや技術文書とは結構勝手が違うので、試行錯誤しています。
最近のお勉強のテーマは、「分かりやすく、購買意欲をそそるようなプレゼン資料の作り方」。※顧客企業に自社サービス/製品を導入してもらうための営業プレゼンの翻訳を想定。
紆余曲折しながらいろいろと本を読み漁っているので、少し記録しておきます。
1. プレゼン資料の作り方系
まず読んでみたのが「プレゼン資料作成」と題された書籍の数々。
書店に行くと類書がいくつも置いてありますが、プレゼンテーション資料の翻訳の参考になりそうな本はありませんでした…。
この手の本のほとんどは、プレゼン資料のビジュアル面 (グラフなど) に重きを置いた内容で、プレゼン資料の文章面について解説しているものがないのです (あったとしても、文章は簡潔に、とかそんなレベル)。プレゼン資料の文章って、そんなに重要性低いのかしら?
とはいえ、『外資系コンサルのスライド作成術 作例集』 はとても参考になりました。実際のコンサルティング現場で使用されたスライドをベースにしたものが多数掲載されているため、ビジネスで求められるスライドの品質ってこんなものなのね!というのがよく分かります。本書の「はじめに」で、「スライド作成のテクニックを向上させるために一番有効なのは、スライド作成の達人が作成したスライドをたくさん見て、出来ればそれを紙に模写することだ」と書かれています。このアドバイスはスライドを作成するビジネスパーソン向けのものでしょうが、スライドを訳す翻訳者としても役立つかなぁと思いながら、私も少しずつ模写を進めています。
2. 売れる文章/コピーライティング系
そこで、魅力的なプレゼン文章はどう書くべきか?ということで、次に読んでみたのが「売れる文章」、「コピーライティング」と題された書籍。
内容は面白いのですが、直接 (すぐに) 仕事に生かせそうなものは多くありません (コピーライティングの単語帳系は、語彙力アップに役立つかも?)。消費者向けの文章/コピーライティングを題材にしている本がほとんどで、ピンとくるものがないのです。
消費者の心に訴えかけるには?という問いには答えてくれるのですが、あいにく、私が扱っているのは企業向けの営業資料なので。
表現を練るときの相談相手になりそうだった本はこちら。
3. 法人営業系
では、決裁権を持っているお偉いさんに訴えかけるには…と考えて読んでみたのが営業関係の書籍。翻訳からはずいぶん遠ざかっている気がしますが。
これまで IT 技術の勉強がメインだったので、営業の本を読むと目からウロコが落ちるようです。
そのプレゼン資料が誰を対象に (決裁権のあるトップ? 権限のない単なる購買担当?) どのような目的/切り口で (製品の紹介?優位性のアピール? 企業の課題解決?) どのタイミング (情報提供? 検討? 見積もり?) で行うために書かれたものかを判断し、どのようなトーンで翻訳してプレゼン対象に訴えかけるかを決定するうえで、営業手法の知識はあって無駄なことはありませんね…!
面白かった本はこちら。
この本によると、営業には大まかにいって 3 種類ありそうです。「顧客から要望を受けて自社製品を売り込む」、「自ら顧客の現在の課題を発見して、解決に役立つ製品を売り込みに行く」、「顧客が将来直面しそうな課題に焦点を当てて、先手を打って売り込みに行く」。
最初の 2 つは、顧客が既に課題を認識していて解決策を模索している場合が多く、ソリューションや解決策の意義よりも、スペックや価格で現場レベルで意思決定が行われることが多いとのこと (見積もり依頼を受けて高い値段を出すと、いくらよいサービスを提供できるとしても、他社に負けてしまうことありますよね…)。
本書が指摘するのは、3 つ目こそが本物の提案営業であり、将来起きうる課題ゆえに、時間的には余裕があり、顧客の上層部が「投資」として戦略的に取り組むことができる (うまくアピールできれば大きなビジネスになるかも…!) …ということです。
ビッグビジネスの成否を翻訳が (多少なりとも) 握っているかもしれない…と思うとドキドキしちゃいますね。でも、翻訳報酬が低いとソースクライアントのやる気が心配になりますね。
これは、法人営業とは少し異なるのですが…
プレゼンは数十分~ 1 時間程度かけて相手に検討材料を提示してじっくり判断してもらうのに対し、ピッチとは 3 ~ 5 分程度の短い時間で相手の心に訴えかけ、アクションを引き出すという違いがあるのだそう。
プレゼン資料のボリュームや情報量も、翻訳のトーンを決める参考になりそうだ、と気づきました。