仕事の空き時間を使って、景品表示法 (不当景品類及び不当表示防止法) について勉強しています。法律の文章がややこしい&消費者庁でいろいろな資料が公開されすぎ!なので、勉強メモがてらブログにまとめます。
景品表示法とは
マーケティング翻訳をやっているとあるあるなのですが、「業界一」「最も」などの言葉は根拠がないと絶対に使ってはいけない、とクライアントや翻訳会社から指示されることがあります。この指示の背景にあるのが景品表示法です。
景品表示法は、商品やサービスに関して品質、内容、価格等を偽って表示をすることを禁止 (不当表示の禁止) し、過大な景品類の提供を防ぐことを制限 (景品類の制限及び禁止) しています。翻訳業務には「不当表示の禁止」が関係します。
景品表示法を学ぶ理由
消費者庁の「表示に関するQ&A」ページに、次のような Q&A がありました。
回答によれば、違反に問われるのはメーカー側で、この広告代理店は表示規制の対象とはなりません。しかし、広告代理店も不当な表示がなされないよう十分な注意を払う必要があるとのこと。広告代理店の立場は、そのまま翻訳者に置き換えることができるでしょう。
なお、景品表示法に違反すると、消費者庁や都道府県知事から指導や措置命令、課徴金納付命令が下されることもあるそうです (参考: 景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?)。
翻訳の瑕疵というと大抵は誤訳を思い浮かべますが、正しい訳でも法律に違反していたらそれも瑕疵のある翻訳物と見なされてしまうでしょう。場合によっては、翻訳者に損害賠償請求が来ることもあるかもしれません。
私が考える、景品表示法を学ぶべき理由は 2 つです。
- 賠償リスク回避: 前述のとおり、景品表示法は瑕疵のない翻訳を作るために必要な知識です。顧客によっては使ってはいけない (景品表示法的にアウトな) 言葉リストを用意してくれている場合がありますが、リストに照らし合わせて OK かどうかをチェックするのではなく、能動的に適法な文章を書けるようになりたいものです。
- 他の翻訳者との差別化/翻訳サービスの付加価値: 景品表示法は日本の法律ですから、他の国で書かれた原文が景品表示法に従っていないことはままあります。そのとき、原文に忠実に訳すリスクを顧客に伝え、代わりの訳を提案できれば、他の翻訳者と差別化したり、サービスの付加価値を感じてもらえるかもしれません。
翻訳現場における景品表示法違反事例
消費者庁が公開している「景品表示法における違反事例集 (PDF)」に該当事例はありませんが、弁護士による以下の記事がありました。
誤訳が原因と思われる優良誤認事例の紹介に加え、ローカライズを行う際には単なる翻訳ではなく日本の法律に適合しているかのチェックを行うべきだと指摘しています。
参考資料
景品表示表を学ぶための参考資料をまとめておきます。
こちらが景品表示法の原典です↓
概要を知るには、パンフレット「事例でわかる景品表示法 (PDF)」が分かりやすいです。
原典だけではムズカシイので、解説を加えた以下のような本を適宜参考に↓
なお、「景品表示法 ライター」などのキーワードでネットを検索すると、ライター向けに景品表示法についてまとめた記事が複数見つかります。勉強のとっかかりとしては、そのような記事を参考にするのもよいかもしれません。
※ライターの求人を探すと、景表法の知識があることが要件になっているものが結構見つかります。そのことから考えても、ライターの仕事に近いマーケティング翻訳/トランスクリエーションを行う翻訳者は特に、景表法の知識があったほうがよいですね。
他国の類似規制
日本に景品表示法があるように、他の国にも消費者保護のための類似の法律があります。
例えば、米国の Federal Trade Commission Act (連邦取引委員会法) も不当表示を制限しており、Free (無料) という単語の使い方に注意が必要だったりします。各国について詳しくは、「<国名> 広告規制」、「<国名> 不当表示 禁止」などのキーワードで検索してみてください。
このような法律を知っておくと、日→ X の翻訳をする際に役立ちます。X →日の翻訳をするときも、現地の規制であの単語を使えないのかな…なんて思いをはせることができます。