もはある日記

岡山県の西端で、英日翻訳をしています。ここに「も」ステキなもの「は」いっぱい「ある」よ!

仕事始めのルーティン

新年明けました。

取引先の会社もぼちぼち仕事が始まっているようですが、案件が発生して打診が来るまでには少しラグがあります。

年末年始休暇を使って手持ちの案件をすべて片付けたので、翻訳の仕事は瞬間風速的に (希望的観測) ゼロ。このタイミングを活用して、確定申告の準備など、いろいろな事務作業を片付けていきます…!

 

いつも年明け最初に行う作業はというと

です。

その年の仕事をスムーズかつ整然と進められるように、もろもろ整理していきます。

2022 年の仕事用フォルダーのバックアップ

2022 年の仕事で使ったファイルを外付け HDD にバックアップして、デスクトップ PC とノート PC のストレージから不要なファイルを削除します。

最近は受注する案件の原典ファイルで画像がふんだんに使われていたり、動画字幕案件が増えたりしているので、参考資料のデータ量が多くてストレージがずいぶん圧迫されてしまいます。時間のあるタイミングで、残しておくべき参考資料の取捨選択をしておきます。

2023 年の仕事用フォルダーの作成

受注した案件を整理するためのフォルダー構造をあらかじめ用意しておきます。

 

例えば、2022 年の仕事用フォルダーがこんな状況だったら…

[2022]

┣[<翻訳会社A>](特定クライアントの案件がアサインされる)

┣[<クライアントA>]

┣[参考資料](スタイルガイドなど、そのクライアントに共通の資料)

┣[<HOdate_project name>]

[<HOdate_project name>]

┗[<クライアントB>]

┃ ┣[参考資料]

┃ ┣[<HOdate_project name>]

┃ [<HOdate_project name>]

[<翻訳会社B>](アサインされる案件のクライアントはばらばら)

┃ ┣[参考資料]

┃ ┣[<HOdate_Client name_project name>]

┃ [<HOdate_Client name_project name>]

[<翻訳会社C>]

 ┗[トライアル]

 

このように 2023 年のフォルダー構造を用意しておきます。

[2023]

┣[<翻訳会社A>]

┣[<クライアントA>]

[参考資料]

┗[<クライアントB>]

┃ [参考資料]

[<翻訳会社B>]

┃ [参考資料]

[<翻訳会社C>](トライアルに合格したのでフォルダーを用意)

案件管理シートの作成

案件の打診、受注、納品の状況を管理するために、Excel で案件管理シートを用意しておきます。

 

発注元 (翻訳会社やクライアント) によって少しずつ内容は違うのですが、おおむね共通しているのは以下の列です。

  • HO: HO (予定) 日
  • HB: HB 予定日
  • フォルダー名: [<HOdate_project name>] フォルダーの名前
  • WWC: ワード数 (ワード単価の案件の場合)
  • 単価: ワード単価
  • 時間: 作業時間数 (時間単価の案件の場合)
  • 単価: 時間単価
  • 金額: [WWC]×[単価] または [時間]×[単価] が表示されるように式を入力
  • ステータス: 受注確定、作業中、納品済、請求済、入金済から選択
  • PO#: 発注書番号または請求書番号
  • 入金額: 入金されたら入力
  • 差額: [金額] - [入金額] 。値が 0 ではなかったら要確認

翻訳コメントを効率的かつ簡潔に書くための Tips

昨年「翻訳コメントの書き方」という記事を書いてからそろそろ 1 年が経ちます。ありがたいことに、こちらの記事は今でもときどきアクセスをいただいております。

今回はその続編として、前回書かなかったいくつかのトピックを書こうと思います~。

 

目次はこちら。

翻訳コメントとは

前回の記事できちんと定義していませんでしたが、翻訳者が原文や訳文に関して顧客やレビュアーに伝える疑問、報告、質問、申し送りなどを、この記事では翻訳コメントと呼んでいます。具体的にどんなコメントをするべきかについては、「翻訳コメントの書き方」をご覧ください。

 

翻訳コメントを伝える方法としては、翻訳に使うソフトウェア (Word、Excel、PDF、各種 CAT ツールなど)  のコメント機能を使ったり 、Excel ファイルにまとめたり、納品メールに書き添えたりなど、ケースバイケースです。

翻訳コメントは無駄なタダ働き?

たくさん翻訳コメントを書いても、もらえる報酬が増えるわけではありません。そのため、コメント作成に時間を費やせば費やすほど、相対的に時給は低くなってしまいます。それは短期的には事実です。

しかし、長期的に見ればメリットがあります。それは、翻訳会社や顧客にとって役立つ翻訳コメントを書けば、自分の翻訳物に付加価値を付け、単価アップ交渉をしたり、優先的に仕事を受注したりできるようになることです。

 

どういうことか、翻訳会社の立場になって考えてみましょう。

 

翻訳会社では、翻訳者から翻訳物を受け取ると、チェッカーやレビュアーがその内容を確認し、必要に応じて修正します。その成果物を顧客に納品するとき、原文や訳文に疑問、報告、質問、申し送りがあれば、それを顧客に適宜伝えます。

このとき、チェッカーやレビュアーの作業を助けるのが翻訳コメントです。私の経験を基に、翻訳コメントに助けられる例を紹介すると…

  1. 原文から訳文が離れているので疑問を持ち、じっくり調べてみると、訳文が正しいとわかったことがあります。このとき、翻訳する際に根拠にした資料を翻訳コメントとして残してもらえたら、二度手間になることなく、調査時間を短縮できたのに…と思いました。少し具体的に挙げると、原文の A という製品が、訳文では α という製品名に変更されていました。時間かけて調べたところ、A という製品は最近名前が α に変わったので、訳文では α とした方がよいという結論になりました。
  2. 顧客に伝える翻訳コメントは、レビュアーやチェッカーといった担当者が時間をかけて書きます。翻訳者が書いた翻訳コメントがあると、翻訳コメントを書くべき項目を洗い出したり、コメントを書いたりする作業が大幅に楽になります。

 

レビュアーやチェッカーが時給制の場合、仕事がはかどると、翻訳会社は人件費を浮かすことができます。そうなったら翻訳者は、「レビュー/チェック工程のコストが浮く分、翻訳単価をアップしてくれませんか」と交渉ができます。

あるいは、ワード単価制の場合は、レビュアーやチェッカーはチェックしやすい (作業を短時間で終えられる) 翻訳者の訳を担当したいと考えるでしょう。レビュアーやチェッカーから好評を得られれば、リピート受注や受注量増につながります。

 

翻訳コメントにはこのように、短期的に報酬に結びつかなくても、長期的なメリットが考えられます。

だからといって、コメント書きに時間をかけすぎてしまったり、コメントをたくさん書きすぎてそれを読む相手に負担をかけてしまったりしたら、本末転倒ですよね。

というわけで、次のセクションでは効率的&簡潔に書くヒントをご紹介します。

コメントを効率的&簡潔に書くヒント

IME 辞書に単語登録する

コメントでよく使うフレーズは IME 辞書に単語登録してしまいましょう。例えば、こんな感じです。

「げんてん」と入力してスペースキーを押したら、「原典誤記。■■は●●の誤記と判断し、訳文で修正しました。」が候補として出てくるように設定しています。あとは、■■と●●を置き換えるだけです。

辞書への追加方法はこちらを参照。

注目してほしいところを目立たせる

レビュアーが翻訳コメントの内容を理解しやすいように、必要に応じて、前後の文脈も含めて報告する必要があります。少し工夫すると、注目してほしい部分がすぐに伝わります。

コメントを書くために使うソフトウェアの機能に応じて、その時々にあった方法を使ってください。

  原文 訳文 翻訳コメント
分かりにくい例 You can find this file in the following location: C:\Program Files\Microsoft Offce\Office 15\ or C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ このファイルは C:\Program Files\Microsoft Office\Office 15\ または C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ にあります。

原典誤記。OffceはOfficeの誤記と判断し、訳文で修正しました。

太字 You can find this file in the following location: C:\Program Files\Microsoft Offce\Office 15\ or C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ このファイルは C:\Program Files\Microsoft Office\Office 15\ または C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ にあります。

原典誤記。OffceはOfficeの誤記と判断し、訳文で修正しました。

色を付ける You can find this file in the following location: C:\Program Files\Microsoft Offce\Office 15\ or C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ このファイルは C:\Program Files\Microsoft Office\Office 15\ または C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ にあります。

原典誤記。OffceはOfficeの誤記と判断し、訳文で修正しました。

斜体 (イタリック) You can find this file in the following location: C:\Program Files\Microsoft Offce\Office 15\ or C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ このファイルは C:\Program Files\Microsoft Office\Office 15\ または C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ にあります。

原典誤記。OffceはOfficeの誤記と判断し、訳文で修正しました。

** で囲む You can find this file in the following location: C:\Program Files\Microsoft **Offce**\Office 15\ or C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ このファイルは C:\Program Files\Microsoft **Office**\Office 15\ または C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ にあります。 原典誤記。OffceはOfficeの誤記と判断し、訳文で修正しました。分かりやすくするため、左記は便宜的に ** を追加しました。
大文字にする You can find this file in the following location: C:\Program Files\Microsoft OFFCE\Office 15\ or C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ このファイルは C:\Program Files\Microsoft OFFICE\Office 15\ または C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office 15\ にあります。

原典誤記。OffceはOfficeの誤記と判断し、訳文で修正しました。分かりやすくするため、左記は便宜的に大文字にました。

 

スクリーンショットや動画を添付する

文字で説明すると長くなってしまう内容も、画像や動画を添付すれば簡単に伝えることができるケースがあります。

 

翻訳中にマストな作業ではないので作成方法を知らない方も案外いらっしゃいますが、やってみると極短時間 (数秒!) で準備できるので方法を覚えておくと便利です。

今回はスクリーンショットの作成方法を、操作方法が簡単なものから、ちょっと高度だけど柔軟性がある方法まで、いくつかご紹介します。動画の作成方法は是非ご自分でお調べください。

スクリーンショットの作成方法

1. デスクトップ (現在モニターに表示されている画面全体) のスクリーンショットを撮る:  キーボードで Print Screen キーを押します。画像編集ソフト (ペイントなど) に貼り付けます (ソフトの [貼り付け] ボタンを押すか、Ctrl + V キーを押す)。名前を付けて画像ファイルを保存します。

 

2.  デスクトップのスクリーンショットを撮って、[ピクチャ] フォルダーに自動的に保存する: キーボードで Windows + Print Screen キーを同時に押します。

 

3: 現在選択しているウィンドウのスクリーンショットを撮る: キーボードで Alt + Print Screen キーを押します。画像編集ソフト (ペイントなど) に貼り付けます (ソフトの [貼り付け] ボタンを押すか、Ctrl + V キーを押す)。名前を付けて画像ファイルを保存します。

 

4. 現在選択しているウィンドウのスクリーンショットを撮って、[C:\Users\<ユーザー名>\Videos\Captures] フォルダーに自動的に保存する: キーボードで Windows + Alt + Print Screen キーを同時に押します。

 

5. デスクトップ画面の任意の場所をスクリーンショットに撮る (Snipping Tool を使う): Snipping ToolWindows に標準で用意されているツールです。検索バーに「s」と入力すると検索結果に表示されるので、クリックします。

[新規作成] をクリックします。

マウスポインタが十字になるので、切り取りたい領域をドラッグで選択します。

選択が完了すると、以下のような画面になります。ここで、ペンツールを使ってスクリーンショットにメモを加えることもできます (以下は赤ペンで矢印と丸を書き加えてみました。右上の虹色の水滴アイコンをクリックしてペイント 3D に移動した方が、図形やテキストも追加できて便利です)。


スクリーンショットや動画を添付する際には、ちょっとの気配りで、受け取った相手の満足感 (?) がずいぶん変わります。

気配り 1: コメントを画像や動画に含めない (コピペできる形式でコメントを別に用意する)

コメントはコピペできる形で用意した方が喜ばれます。

コメントを受け取った人が、沢山ある原文の中から該当箇所を探すのに苦労することもしばしば。場合によっては、当該言語を知らない人がコメントに対応するケースもあります。そんなとき、コピペできると何かと助かるのです。

例: ↓ のようなコメントをもらったらどうします?

 

気配り 2: 添付ファイルには通し番号を付ける

添付ファイルには「01_スペルミス.png」のような形で冒頭に通し番号を付けると、受け取った側はすぐに該当のファイルを見つけられるので助かります (特に、複数の添付ファイルを送る場合)。

コメントには、「スペルミスです。гетерохромие を гетерохромией に変更してください。詳しくは添付の 01_スペルミス.png をご覧ください。」などのように、ファイル名を書き添えます。

ホームから離れた場所で仕事をするメリットとは? (やっぱりワーケーションが気になる)

先日は、家族がいるとワーケーションは利用しづらいという記事を書きました (こちら: 理想のワーケーションにはまだまだ現実が追い付いていない - もはある日記)。というわけで、ワーケーションに対するモチベーションは下がっているのですが、引き続きワーケーションに関する本や記事を読んでいます。

 

今回読んでよかったのはこちらの本。

前回紹介した『ポスト・コロナ時代 どこに住み、どう働くか』、Discover Japan2021年3月号「ワーケーションが生き方を変える?地域を変える?」』は、いかにワーケーションをエンジョイするかを労働者側の視点から考える本でした。

一方、『ワーケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」』は、主にワーケーション制度を制定する企業や、ワーケーションを誘致したい自治体の視点で、ワーケーションの変遷、メリット、課題などを検討する内容となっています。

 

セキュリティや社員同士のコミュニケーションの課題など、興味深い内容はいろいろとありますが、経営陣以外には直接役立つ内容ではないので今回は割愛します。

 

個人が本書から得られる教訓は、普段生活/仕事しているエリアから離れるほど、新しいアイデアが生まれる可能性が高まるということです。

それが繰り返し主張されているので、いくつか引用してみましょう。

独立研究者の山口周氏や早稲田大学大学院教授の入山章栄氏をはじめとする多くの方々が「個人の発想や創造性は、その人の移動距離に比例する」と述べています。創造性と移動距離に相関性があるのは、移動距離を広げて新しい場所に自分の身を置くことが、新しい視点をもたらしてくれるからだと考えられます。 (Kindle 版 位置34)

 人間は環境に支配される生き物だ。移動した距離に比例して、景色が変わる。人が変わる。食べ物が変わる。話す言葉が変わる。気温が変わる。文化や風習が変わる。常識が変わる。遠くに行けば行くほど全てが大きく変わるのだ。

 そして元いた場所に戻ってくると、自分の今立っている場所では常識だから絶対に変えてはいけないと信じて疑わないでいたことが、意外と簡単に変えても大して問題のないことだと思えたりする。

 そんな変化を沢山経験しているうちに、脳みそが刺激され活発になっていくから、自然とアイデアがわいてくるのだろう。 (Kindle 版 位置1199。

アイデアの量は移動した距離に比例する。 | OWNDAYSの社長のブログからの引用箇所)

辺境エリアは都心部と違って人口密度の低さ、不便さなどがあり、人々のニーズや問題を浮かび上がらせ、新たなビジネスやソリューションが生まれる可能性が高くなることも挙げられます。 (Kindle 版 位置1551)

企業の社長が軽井沢に別荘を持つ理由の 1 つに、ネットワーク効果への期待があると聞いたことがあります。ある場所に集まっている人材がよい人たちであれば、その人たちに会うためによい人材がさらに集まっていく正のネットワーク効果が生まれるのです。 (Kindle 版  位置1565)

日本の場合、特に大企業にはバックグラウンドの似通った人材が集まる傾向があります。ほとんどの社員は日本のみで教育を受け、受験戦争システムの中で培養された人材であり、出身大学も大企業になればなるほど、似たり寄ったりになります。その一方で、イノベーションを生み出すためには、様々な視点を持つ多様な人材との交流が重要です。 (Kindle 版 位置1570)

 

普段いる場所から離れると、否が応でも、離れた先の良いところや悪いところを発見できるはずです。良いところを見つければ普段いる場所の改善に、悪いところは離れた先での新ビジネスにつながります。

本書はワーケーションが主題なので特に物理的な移動の例が多いですが、ワーケーションが難しい場合は、普段いる会社や業界を離れてみる (例: 他社や異業種の社員も参加する勉強会に申し込む) のも新しいアイデアを生み出すのによいかもしれませんね。

オススメのお仕事マンガ・お仕事小説

「彼を知り己を知れば百戦殆からず」なんて言いますが、翻訳作業における「彼」とは、原文著者と読者ではないでしょうか。原文著者の目線に立ち、読者が自然に受け入れることのできる言葉に訳すためです。

 

実務翻訳に関していえば、以下のようなことを把握して著者像と読者像を把握しておくと翻訳作業がやりやすくなるでしょう。

  • 原文著者: どのような仕事・経歴で、どのような業務経験から、どのような目的でその文章を書いたのか?
  • 読者: どのような仕事か (仕事内容、業務・業界の常識 etc)?専門分野は?知識レベルは?どんな語彙を使うか?

…と結構堅苦しい感じに列挙しましたが、実際のところ、私は案件ごとに細かく読者像を設定しているわけではありません。どちらかといえば、「ABC ソフトウェア株式会社で働いている中堅プログラマーの A さん」のように著者像や読者像を設定し、A さんならどのような文章を書くだろうか? A さんが読んでいる業界紙にはどんな文章が載っているだろうか? というのを念頭に置きながら訳すわけです。

想定する著者像や読者像に自分が合致していたり (特定業界の専門性を高めて翻訳者に転職するパターン)、せめて合致する知人・友人がいれば良いのですが、そうは大抵いきません。

ではどうするか?オススメは特定の業界向けの勉強会・セミナーやカンファレンス後の懇親会なのですが、そのようなイベントに参加して楽しくおしゃべりするには最初はハードルが高いものです (ある程度勉強していかないと話を合わせることができないんだもの)。

そこで、趣味と実益を兼ねて、お仕事をメインテーマにしたお話をよく読んでいます。中でもお気に入りのお仕事マンガ・小説を紹介します (けっこう偏ってます)。

 

マンガ

NEW GAME!

高卒でゲーム制作会社に就職した主人公が、ゲームキャラクターの制作に携わりながら、プロとして成長していくストーリー。ゲームの企画、開発、デバッグ、リリースの流れや、プログラマーキャラクターデザイナーモーションアクターなどの連携もなんとなーくわかります。

現実のゲーム業界ではけっこう悲惨なエピソードを聞くことがあるのですが、本書はフィクションなだけあって、多少のトラブルがありつつも最終的には円満に解決するので安心して読めます (笑)。登場人物がみんないい人なので癒されます…。

アニメ化もされていて、コミックよりも解像度高くオフィスの環境を知ることができます (このソフトウェア使って開発してるんだ、とか)。

 

 

東京トイボックス

こちらもゲーム制作会社が舞台のマンガですが、雰囲気は NEW GAME! とは正反対です。悲惨なエピソードを集めて煮詰めて、主人公は御し難く度し難い。

主人公が抱える課題のスケールが大きいぶん、読み終えたときのすっきり感があります。

こちらは実写ドラマ化していましたね。

 

一級建築士矩子の設計思考

一級建築士の古川矩子 (こがわかなこ) が、設計事務所に勤めた後に独立、個人事務所を設立したところから始まる一級建築士の実務ストーリー。主人公の事務所に持ち込まれる依頼は現実に即しているものながら、マンガとして面白くなるよう演出されていて、惹き込まれます。

個人的に好きなポイントは、矩子が 20 代後半で一国一城 (個人事務所) の主になっていることですね。事務所のデザイン素敵すぎるだろー。私もこんなオフィスを構えたいっ、と悶々としてしまうのです (自宅でできる仕事だけど、外に仕事場を作るのもいいなと思っているので)。

まだ 1 巻しか出ていませんが、今後が楽しみなシリーズ。

 

小説

なれる!SE シリーズ

ブラックなシステム開発会社に就職した主人公が、凄腕エンジニアな美少女上司の下で、社長が獲得してくる無謀で過酷な案件になんとかかんとか立ち向かい、成長していくシリーズ。各巻のテーマは、開発vs運用、コンペ、プロジェクト管理、カスタマーエンジニアなど。社長から課された無理難題や仕事のピンチを主人公と上司があれこれ工夫してクリアしていきます。

このシリーズを読み始めた当初は、私も新卒で、SE とは何ぞや? と詳しいことはわからず、読み進めていってその仕事の幅広さを知りました。IT って面白いかも!と興味を持つきっかけになった作品です。

上司が美少女なところはどうしようもなくラノベですが、一般向け小説レーベルで出ていてもおかしくない、リアリスティックなストーリー。実際に SE の知り合いができた今では、この小説はフィクションだけれどもかなり現実味のある物語に感じています。

 

 

理想のワーケーションにはまだまだ現実が追い付いていない

今週のお題は「最近おもしろかった本」。

 

休業中で時間が余っているので、毎日もりもり本を読んでます。

 

中でも面白かった…というか、他の本をいろいろ読むきっかけとなったのがこの本です。

2021 年 2 月刊。コロナ前~コロナ下~コロナ後で、住み方 (住居の広さ、機能、立地) や働き方 (オフィス、リモート、ワーケーション) がどのように変わっていくのかをデータを基に確認、予想しています。

本書の予想では、リモートワークの普及に合わせて、仕事用のスペースのある広い家への住み替えが進むだろうということでした。しかし、現時点ではずいぶんとコロナ前の生活に戻りつつあり、今後予想通りにいくかどうかは難しいところかもしれません

(とはいえ、年収800万円以上のITエンジニア、95%以上が「リモート勤務」と回答 転職サービスFindy調べ - ITmedia NEWS というニュースもあるので、業界によってはリモート勤務が大きく進展しているのかも)。

 

本書で取り上げられている暮らし方・働き方は、都心を中心としたもののため、地方在住者としてはとりわけ興味をそそられるものではありません。気になったのは、繰り返し言及されていたワーケーションについてです。

 

ワーケーションとは、Work (仕事) と Vacation (休暇) を組み合わせた造語で、観光地やリゾート地でテレワークするという働き方のことで、国を挙げて普及を目指しています。

働く場所に縛られないフリーランスは、ワーケーションしやすい立場です。私はときどきカフェやコワーキングスペースで作業したり、遠方で開催される勉強会のついでに観光をしたりはしてきましたが、家の外で働くときはワーケーションやリモートワーク向けに整えられた空間で仕事ができていたわけではないし、家族でワーケーションしたこともないので、今後もっとワーケーションしやすく進展していくのか?に関心があります。

 

具体的なワーケーションの過ごし方の例としては、『Discover Japan2021年3月号「ワーケーションが生き方を変える?地域を変える?」』などで特集が組まれています。

紹介されている設備の整ったホテルやコワーキングスペースの情報にワクワクしますし、ワーケーション先で楽しめるエンターテインメントやご当地グルメにも夢が広がります。

 

が、しかし。

 

夢のようなワーケーションプランに胸が高まっても、あるとき気持ちがスッと冷めてしまいます。だって、家族はどこにいるの?

 

この雑誌の他にも Web サイトで紹介されているワーケーション事例の多くは、おひとり様ワーケーションのモデルプランなんですよ。独身だったらいいかもしれないけど、結婚していて、子どもがいて、あるいは親の介護をしていて…という人には到底参考になりません。家族をほっぽり出して一人でワーケーション…なんて、そうそういけないです。

 

家族が有意義に過ごしている間に自分は仕事を進められれば理想ですね。子ども連れのワーケーションの方法で興味深かったのが『親子ワーケーションのススメ: 好きなときに、好きな場所で暮らす生き方』。

本書は、北海道やハワイで子供連れの長期ワーケーションをした記録です。長期で、海外でワーケーションする点はあまり真似できないと思いますが、ワーケーション中の子どもの過ごし方 (現地の学校に行く、体験プログラムに参加する、Skype で家庭教師の指導を受ける) なんかは参考になるのではないでしょうか。

Google で「親子 ワーケーション」などで検索すると、親の仕事中に子どもが参加できるプログラムをいろいろと見付けることができます。とはいえ、まだまだ件数は少なく、開催期間が長期休暇中に限定されていたりと、親子でのワーケーション先や期間の選択肢は限られているのが現状です (こういうところにビジネスチャンスがあるのかも)。

 

ワーケーション中の家族の過ごし方も問題でしたが、スケジュール的にワーケーションに家族を帯同するのが難しい、というのも問題です。

ワーケーションがもてはやされている一因として、旅行需要の分散、休暇の分散取得への期待があります。しかし、いくら環境や制度が整備されても、平時は配偶者の仕事や子どもの学校といったものが障害となって、家族を伴うと長期休暇シーズンしかワーケーションできないのが現状でしょう。子どもについては、金曜日はリモート授業日にするとか、リモート授業週を年に 1 回設ける、なんてしてもらえると、ワーケーション実現がぐっと近くなる気がします。

 

実務家が理論を学ぶべき理由

先日、『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む〜プリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで〜』という本を読みました。

本編が面白かっただけでなく、番外編として掲載されていた著者とゴスペラーズ北山陽一さんの対談もとっってもよかったので、紹介させてください。

 

北山さんは現在 SFC で大学院生をしていて、たまたま著者の授業をとったのがきっかけで今回の対談が実現したとのこと。対談のテーマは、「音声学と歌」。すでに音楽のプロとして活動している北山さんが音声学を学ぶことで、プロとしての活動にどんな影響があったのかが語られます。

 

私たちは、音声学を学ばなくても、しゃべったり、歌ったりと、声を出すことができます。プロになる人はさらに上手に声をコントロールする (しかもそれが感覚的にできる人が多い) わけですが、そこに音声学の知見が加わるとより精緻なコントロールが意識的にできるようになる、精緻なコントロールが求められるプロこそ音声学を通じて発声のメカニズムを知っておくべきだ、というのが北山さんの意見です (雑なまとめなので、詳しくは本書を読んでください!!)。

 

北山さんの例は音声学の知見が声の仕事に生かせるというものでしたが、この対談を読みながら、他の職業でも理論を実務に活かせる事例が多々思いつきました。

 

例えば、画家やイラストレーターにとっての解剖学や配色理論だったり。プログラマーにとってのコンピューターサイエンスだったり。

解剖学や配色理論を知らなくても絵は描けます。コンピューターサイエンスを知らなくても、プログラミングはできるでしょう (私もプログラミングをしますが、ちゃんと勉強しておらず、ほとんどコピペです汗)。しかし、プロとして仕事をするには理論を知らなければならない、理論なくして高度な応用はできない、というのが長く仕事を続けているプロの意見ではないでしょうか (Yahoo 知恵袋やら、Twitter やらで、大学に行くか、OJT でスキルを身に付けるか悩む若者に対し、理論を学ぶことをお勧めする意見をよく見ます)。

 

では、翻訳者が学ぶべき理論とは何でしょうか。

どのような翻訳にも共通で役立ちそうな学問をピックアップしてみました。

  • 外国語を読む、訳す … XX 語学、翻訳論
  • 辞書を選ぶ、辞書を引く … 辞書学
  • 情報を探す、検索する … 図書館情報学
  • 分かりやすい/読みやすい文とは何か … 認知科学

外国語の読み書き、辞書引き、資料の調査など、専門的に学ばなくても感覚的にできる翻訳者が多いとは思いますが、これらの理論を学んでみると案外新しい発見があるかもしれません。

翻訳で使える inurl 検索の Tips

翻訳作業の大きな味方が Google などのインターネット検索エンジンです。翻訳作業の少なくない時間を検索に費やしている方も多いのではないでしょうか。

とはいえ、最近は何かを調べようとしても、アテにならない記事がたくさん出てきて信頼できる情報を見付けるのに時間がかかる…なんてこともよくあります。

 

Google 検索では、単純にキーワードを入力するだけでなく、検索オプションを追加で指定することで、検索結果を絞り込むことができます。うまく使いこなせば、検索時間を大幅に短縮でき、作業効率アップにつながります。

 

今回は、数ある検索オプションの中から、URL に特定の文字列を含むページだけを検索対象とする inurl 検索について、ちょっとした小ワザをご紹介します。

inurl 検索とは

Google 検索をするときに、検索キーワードに追加で「inurl:<文字列>」を追加すると、URL に <文字列> を含むページだけを対象に検索が行われます。

例えば、こんな感じに入力してみます。

この結果は次のようになりました。microsoft.com が URL に含まれるページだけがリストアップされています。

検索ワードから「inurl:microsoft.com」を削除して、もう一度検索してみると、次のようになりました。

microsoft.com 以外のページも検索結果に含まれるようになりました。検索結果のトップに表示される結果の件数も、154,000 件から 29,400,000 件に大幅に増えています。

inurl 検索の便利な使い方

先ほど inurl 検索の例をお見せしましたが、今まで inurl 検索を使ったことがない方には、どうすれば効果的なのか、どれくらい便利なのかがピンとこないかもしれません。

次は、inurl: の後にどのような文字列を指定すると検索が効率的になるのか、いくつかのパターンをご紹介します。

企業/団体の公式情報を調査する - 企業/団体のドメイン

前のセクションの例で使ったように、「inurl:microsoft.com」など、企業や団体のドメイン名を指定すると、検索対象をその企業/団体が公開しているページだけに絞ることができます (ドメイン名って何?という方はこちらをご覧ください)。

すると、情報の裏を取る際に、一次資料にすばやく当たることができるので、時間を節約できます。

また、この企業では XXX の訳語はどうなっているだろう?「インターフェイス」と「インターフェース」のどちらの表記が好んで使われているだろう?という細かい確認をするときにも便利です。

政府、大学など信頼性の高い情報源だけを検索対象にする - go.jp、ac.jp

「inurl:go.jp」や「inurl:ac.jp」を指定すると、検索対象を政府機関や教育機関に絞ることができます。ドメイン名に「go.jp」を含めることができるのは日本の政府機関や各省庁所管の研究所、特殊法人独立行政法人だけ、「ac.jp」を含めることができるのは日本国内の高等教育機関、学術研究機関だけと決まっているからです。

政府機関や高等教育機関が公開している情報は、一般的に考えて、信頼できるものと言えます。翻訳物を納品する際、参考にした情報を申し送ることがありますが、参考資料として「政府や大学が公開している記事」は説得力があります (「無名の人が書いた記事」を参考資料としてもよいのですが、その記事に誤りが含まれていないかなどをダブルチェックすることもあるので…)。

また、外国の政府組織名や法律名の訳を調べるときも、「inurl:go.jp」が活躍します。

特定ジャンルの文書を探す - faq、terms-and-conditions、agreement、whitepaper

定型的な書き方がある文書でどんな表現が使われているのかを調べるとき、その文書のファイル名に使われがちなワードを inurl: に指定すると、そのものずばりな文書が簡単に見つかります。

例えば、単に「契約書」と検索すると、契約書を作るときの注意点や、契約書の意義などを解説したページがたくさんヒットしますが、実際の契約書そのものが載っているページはなかなか見つかりません。一方、「契約書 inurl:agreement」と検索すると、検索結果に含まれる契約書そのものの割合がぐっと上がります。さらに、契約書の特定の項目の実例を見たいときには、「免責事項 inurl:agreement」、「個人情報 inurl:agreement」などと入力して検索しましょう。

よくある質問なら「inurl:faq」、利用規約なら「inurl:terms-and-conditions」、契約書なら「inurl:agreement」、ホワイトペーパーなら「inurl:whitepaper」などと組み合わせて検索するのがオススメです。

初心者向けの平易な情報を探す - overview、tutorial、gettingstarted

自分があまり詳しくない分野の情報を探すときにオススメなのが、「inurl:tutorial」、「inurl:overview」、「inurl:gettingstarted」などです。初心者向けページの URL に使われることが多いキーワードなので、ある事柄に関する基礎知識を入手したいときに便利です。

単に「XXXX 入門」や「XXXX チュートリアル」とかで検索してもいいのですが、「XXXX入門」というタイトルの本の紹介ページがたくさん出てきて邪魔なときなどに inurl: を使って結果を絞ると快適になります。

用語集や用語の定義を探す - glossary、terminology、definition

何らかの用語の意味を探したいときにオススメなのが、「inurl:glossary」、「inurl:terminology」、「inurl:definition」です。

「XXXX 意味」「XXXX 用語集」で検索すれば十分なことが多いですが、「inurl:glossary」などを組み合わせると検索結果に出てくるページが大きく変わることがあるので、さまざまな情報源に当たりたいときに重宝しています。

おわりに

ここまで inurl を使った検索に使える便利なキーワードを紹介してきましたが、あくまで私個人の経験に基づくものです。専門分野が違えば役立つキーワードもまた違うもの。自分の専門分野に合ったキーワードをぜひ探してみてください。

その他の検索オプションと参考資料

inurl の他にも、検索結果を絞るためのオプションはいくつもあります。例えば、検索対象をページ タイトルだけに絞る「intitle:」、特定のファイル形式 (word、pdf、pptx など) だけに絞る「filetype:」 、特定のワードを検索対象から除外する「-」など。

各種オプションを使った検索は Google検索オプション ページからもできるので、どんなオプションがあるのか覚えるまではこのページから検索するのがお勧めです (ブックマーク推奨)。

 

『ビジネスGoogle活用術』

Google 検索や他の Google サービスは直感的に利用できてしまうので、わざわざ使い方を学ぶ必要性を感じることはあまりありません。そのせいか、サービスの使い方を解説した Web ページはあれど、書籍ベースの情報源はかなり少ない気が。

そのような中で、『ビジネスGoogle活用術』は 10 年以上前に読んで、Google 検索を使いこなしたい!と思う契機になった本です。

 

検索エンジンはなぜ見つけるのか』

検索エンジンの仕組みについて、初心者向けに解説した本。初版は 2011 年と 10 年以上前ながら、現在でも通用する内容です。検索エンジンの仕組みと限界を知っておくと、効率的な検索テクニックを身に着けるうえで役立ちます。