皆さんは、翻訳コメント、どのように書いているでしょうか?
翻訳業務では必要に応じてコメントを書くことが推奨されていますが、他の人のコメントを見る機会はあまりないので、何について書くべきか、どうやって書くべきか、どの程度の分量を書くべきか、お手本がなくて悩むところです。
ある程度コメントを書いて翻訳会社からフィードバックを受ける経験を積むと、コメントとしてどのような情報が求められているのかがわかってきます。
今回はそのような経験から、翻訳納品物に添えるコメントについて、どのようにコメントを書くと考えを伝えやすいか、読み手に分かりやすいかをまとめてみました。
コメントの書き方の一例として、悩んでいる方の参考になりましたら幸いです。
コメントに含める要素
コメントの読み手 (レビュアー or クライアント)、翻訳者が対処できる問題か否か、コメントの提出タイミング (納品前 or 後) などで、コメントに含めるべき要素は変わりますが、多くの場合にコメントに含めたいのが以下の 4 点です。
1. コメントのカテゴリ
コメントの冒頭に、一目でそのコメントの内容や重要度がわかりそうなキーワードをタイトルとして付けます。例えば、原典誤記、訳揺れ、UI の処理、リンク切れ、新規用語、F.Y.I. (参考情報) などです。
2. 問題の簡潔な説明
問題を具体的かつ簡潔に説明します。
3. 現時点での対処/疑問点
現時点 (例えば納品時点) でどのように対処したのか、または何に悩んでいるのかを書きます。
4. レビュアー/クライアントへの依頼
このコメントを読んだレビュアーやクライアントに何をしてほしいのかを書きます。
コメントの具体例
いくつか具体例をご紹介します。
IT 関連の案件を中心に受注しているので、IT 翻訳を前提とした例が多くなってしまっております…。
原典誤記
原典誤記。原文では「Window 11」となっていますが、「Windows 11」が正式です。訳文で修正しました。
この程度のわかりやすい誤記はコメントせずに訳文で修正すれば OK な場合も多いですが、報告すると原文を修正できて助かる!というクライアントもいます。
原典誤記? 原文では「on the right」となっていますが、直前の文から考えて、「on the left」でないと辻褄が合わないように思います。原典誤記かどうかご確認のうえ、必要に応じて「左に」に変更をお願いいたします。
原典誤記かどうか迷ったら、原文通り訳してレビュアーやクライアントにダブルチェックをお願いするのもありです。
訳揺れ
訳揺れ。「XXX」の訳として、TM では「〇〇〇」と「△△△」の 2 つが使われています。TM では「〇〇〇」を使っている例が多いので、このファイルでは「〇〇〇」に統一しました。
UI の処理
Windows の UI。訳はマイクロソフト ランゲージ ポータルで該当する製品を確認して採用しています。特にコメントがない限り、以下同様です。
他にも、UI 訳の確認先として、実機や、Google で見つかった画像を挙げることもあります。
<製品名> の UI。この製品は日本語化されていません。UI は「英語 (日本語)」という形で処理しました。
日本語化されていない UI の処理方法は、「英語」、「英語 (日本語)」のいずれかが指定されることが多いですが、指示書に記載がない場合はコメントで質問するのがベターです (多数の UI が登場してファイル全体に影響する場合は納品前に問い合わせることも)。
リンク関係
日本語版ページあり。指示書にはリンクは変更不要とありましたが、こちらのリンクの日本語版ページを見付けました (https://~~~)。必要に応じて差し替えてください。
リンク切れ。現在リンクにアクセスすると 404 エラーが表示されます。このリンクが機能しないと、必要な情報を読者が得られないので、対処をお願いいたします。
新規用語
新規用語をいちいち報告する必要はありません。他の翻訳者と訳語を統一する必要がある、頻繁に使われる用語なので用語集への登録を提案する…など、ここぞというタイミングでコメントします。
新規用語。「XXXX」は TM に登録されていませんが、ソースクライアントのサイトで最近頻繁に使われているため、定訳が必要になると思います。暫定的に「〇〇〇〇」と訳していますが、この訳で良いかご確認のうえ、用語集に登録をお願いいたします。
コメントスキルを高めるには
コメントって丁寧にわかりやすく書こうとすると時間がかかるし、苦手…という方もいるかもしれません。
私も、今でこそスムーズに書けるようになりましたが、昔はかなり苦戦していました。
そんな中、コメントスキルを高める過程で役立った作業があります。それは「コメントのテンプレートを作る」こと、「チェック/レビューを担当する」ことです。
コメントのテンプレートを作る
「コメントに含める要素」セクションで紹介した 4 点を埋めればよいように、最初はテンプレートを使っていました。慣れてきたら、テンプレートなしでコメントを書くようにしました。
チェック/レビューを担当してみる
チェック/レビュー作業を引き受けると、他の翻訳者のコメントを見て参考にすることができます。また、チェック/レビュー担当者の立場になってみると、翻訳者とは別の視点から、こんな情報がコメントとしてあれば役立つのに…と考えられるようになります。