今回読んだ本はこれ。
翻訳の仕事をしていると、ふとしたタイミングでいきものの名前を翻訳しなければならないことがあります。
それが結構難しい。
実在しているいきものであれば既存の訳を当てればいいよね…と思いきや、それがうまくいかないこともあるのです。
例えば grasshopper はキリギリス・バッタ・イナゴなどの総称ですが、日本語に訳すときは具体的に何を指すのか特定したいとか。
あるいは、原文が書かれた地域では当たり前に存在しているいきものだけど、日本には生息していないので対応する和名がないとか。かといって、カタカナの名称にしたり、学名をそのまま使うのでは読者にわかりづらいよね…とか。
フィクションの翻訳では、架空のいきものやモンスターが出てきて、その名称を翻訳するなんてこともあります。実在のいきものに即してそれっぽく訳したいものですが、どうしたものやら…と困ってしまいます。
前置きが長くなりましたが、そういった事情で手に取った一冊で、期待通りの内容でした。
『どうしてそうなった!? いきものの名前』という興味をそそるタイトルですが、サブタイトルにもある「和名と学名の意味・しくみ・由来」をかなり詳しく解説しています。
第1章は「和名を知ろう」ということで、日本語のいきものの名前についての章なのですが、これが物書きにはとてもお役立ち。
一番最初のトピックが、いきものの名前をひらがな、カタカナ、漢字のどれで書くかに関する解説なのです。NHK の表記基準/表記の使い分けを示しつつ、表記の視認性の話あり、漢字表記からカタカナ表記に変わっていった歴史的な経緯の紹介ありで、なるほどの連続でした。
本書の著者は「外部校正」として出版物の校正をした経験があるらしく、表記がきっちりしているのに納得してしまいます。
以降の章でも、いきもの名を表記する際のイタリック体の使い方や学名の表記方法 (属名は大文字で始めて、小種名は小文字で始める) なんかを解説してくれています。こういった規則は、門外漢だとそもそも規則が存在していることにすら気づけないことも多いので、解説が本当にありがたいです。
和名でよく使われる修飾語についての紹介は、創作生物名を付けるのに参考になりそうな予感…。
第2章は学名について。学名の読み方や命名規約などの決まり事に関する知識がまとまっていて、いざ学名に出会ったときに困らなくて済みそうです。
第3章は名前の雑学。第1章と第2章は表記や命名について学ぶ…という感じでしたが (でも読み物として十分面白いです)、ここにきてようやくタイトルの「どうしてそうなった!?」を回収してくれます。興味あるところをつまみ食いで読めるのがGood。
差別用語が使われているいきものの名前を変える (あるいは変えない) 取り組みの紹介など最近のトレンドについても気になっていたので知れてよかったです。
自宅本棚の参考書籍コーナーのスタメン決定な1冊でした。
