趣味の船旅の延長で、ヨットや豪華客船、軍艦など、船を舞台にした小説も結構読みます。
翻訳モノを読んでいて気になることが多いのが port と starboard の訳です。
port は左舷、starboard は右舷という意味なのですが、この訳を使うとおかしいことが1作品に1シーンは出てくるんですよね。。。
まずは自然な訳になるケース。
- 日の出はデッキの左舷側、日没は右舷側に見える。(From the deck, you can watch the sunrise on the port side and the sunset on the starboard side.)
おかしくない??ってなるのが次のようなケース。
- 右舷は進行方向に向かって右側、左舷は左側だということは知っている。(I know that starboard is right and port is left when facing the front.)
こういった日本語を読むと、右舷が右側、左舷が左側…って当たり前すぎて、改めて確認するほどのことか!!?って思ってしまうんですよね。ただの同語反復~~~
原文を見ると、右舷を表す starboard には right (右) を意味する言葉は含まれていないし、左舷を表す port も然りなので、英語話者にとっては starboard が右で、port が左だったよな…と確認することはとっても自然です(航海用語を使って雰囲気を盛り上げるためにも、その意味を読者に説明するうえでも有意義なので、こういった starboard は右舷、prot は左舷という意味を確認するくだりが小説にはよく出てきます)。
というわけで、これを上記のような日本語訳にしてしまうと、とたんに登場人物が頭悪そうに見えてしまうので良くない!とても良くない!(原文では自然なのに、日本語に訳すと同語反復的になっちゃうケースって専門用語関係だと特によくありますよね…医療系とかでもよく見ます)
じゃあどう訳せばよいか、というと、そのままカタカナにしてしまうことです。
- スターボードは進行方向に向かって右側、ポートは左側だということは知っている。
船で使う用語として、ポート、スターボードはすでに日本語化しています。
参考までに、飛鳥クルーズの用語集へのリンクを挙げておきますね↓
※ごく一部の国語辞典では、ポート、スターボードが立項されていたりします。
日本語でサービスが提供されている客船に乗る場合でも、ポート、スターボードは比較的よく使う言葉です。
たとえば、以下に挙げるのはプリンセスクルーズが乗客に提供しているアプリのスクリーンショットです。
この画面には、船内のさまざまな場所で行われるイベントのスケジュールが一覧になっています。
赤の四角で囲んだ部分を見ると、「PORT」、「STAR…」(BOARD が見切れている)と書かれているのがわかりますね(ローカライズ不足感がありますが)。

こういったイベントの開催場所をアプリで把握したり、船内移動中にクルーに目的地の場所を(英語で)尋ねたりといったときのために port、starboard の意味を知っておくことは日本語母語話者にも重要です。
ということで、実は日本人でも船に乗ったらポートはどっちだっけ?スターボードは?と悩むんですよ (笑)
英語で starboard が右舷、port が左舷…と覚えにくくなっている理由はその語源にあります。wikipedia から該当部分を引用しておきます。
スターボード
スターボード(starboard)という言葉は、古ノルド語のstýri(操作する)とborð(舷)に基づく古英語のsteorbordから来ている。これは、初期の船の操舵方法に由来する。現在のような船の中心線上に舵が取り付けられるより以前、船の操舵は舵櫂(英語版)(舵取り用の櫂)によって行われていた。舵櫂は船尾にいる漕ぎ手によって操作されるが、左利きよりも右利きの人の方が多いため、右利きの漕ぎ手が操作しやすいように舵櫂は右舷に設置された。ポート
ポート(port)という言葉は、接岸時に舵櫂が邪魔にならないよう、左舷を桟橋や岸壁に着けたことに由来する。
「starboard が右舷、port が左舷」を覚えておくと、船での生活がちょっぴり快適になるのですが、問題はどう覚えるか、です。
これはクルーに教えてもらったのですが、英単語の文字数をチェックするとよいそうです。
starboard は 9 文字、port は 4 文字。
right は 5 文字、left は 4 文字。
port と left は文字数が一緒…port は「左」!
ってね。
語源的には港に接岸する側が port (左舷) なのですが、現在では右舷を接岸させることもありますよ。

ポート、スターボードを覚えて良い旅をノシ