もはある日記

岡山県の西端で、英日翻訳をしています。ここに「も」ステキなもの「は」いっぱい「ある」よ!

読書:『スマホは辞書になりうるか』

今回読んだ本はこれ。

日本語を学習している外国人がどのように辞書を引いているのか、どのような辞書を使っているのか、辞書引きにどのような困難を抱えているのかに関する論文集です。

 

翻訳の仕事に辞書は欠かせません。

本書は「外国人の学習者が (主に)  外国語→日本語の辞書を引く行為」をテーマにしており、自分がやっている「日本人が (主に)  外国語→日本語の辞書を引く行為」とは異なるわけですが、何か参考になる点はないか?と読んだ次第です。

 

面白かった点は以下のとおり。

個人的な行為である辞書引きの実際を明らかにする手法

辞書を引くというのはかなりプライベートな行為で、自分がどうやっているのかを他人に見せることはほとんどないですし、逆に他人がどうやっているのかを見る機会もほとんどありません。

 

どんな辞書を使ってる?は簡単に説明できますが、どうやって引いてる?はなかなか説明が難しい。

1 つの単語を調べるときに、1 つの辞書サイトで 1 単語だけを検索ワードとして入力して、訳語が見つかったらそれでよしとするのか。それとも 1 つの辞書サイトで不十分だと感じたら異なるソースに当たって類語やコロケーションも調べるのか。

辞書の使い分けは何かしているのか。

などなど。

 

本書の研究では、学習者にパソコンやスマートフォンなどの画面録画機能を使用して語彙検索行動を記録してもらう+検索行動情報シートに記入してもらうという方法で辞書引き方法について調査したとのこと。

なかなか手間ではありますが、この方法に倣って、検索行動を記録して翻訳の勉強会で共有してみる、というのもありかもしれません。

上級者ほど深く検索

やっぱりね、という調査結果ではあるのですが、語学上級者ほど辞書を使いこなしていますね。

語学初級者は 1 つの単語を調べるとき、辞書サイトに単語を入力して訳語がわかったらそれで終わりにする傾向がある一方、上級者はそこからコロケーションを調べたり、類義語との使い分けを調べたり、と連続して辞書を引く傾向があるという結果が出ていました。

 

翻訳者にとっても同じことがいえるでしょう。

納得がいくまで調べものを続けるか否かが、成果物の出来に大きく影響します。

前述のように、他の翻訳者がどれだけ辞書を引いているかを知る機会はなかなかありませんが、知れたとしたら案外「私の検索量、ザコすぎ?」となっちゃうかも。。。(翻訳のジャンルによってはあまり辞書を引かなくてもいいものもあるのだけどねー)