もう 12 月です。1 年を振り返ってみたら、今年新しく使い始めた CAT ツールが 5 つ。以前から継続で使っている CAT ツールを合わせると、今年は X 個も CAT ツールを使っている!!? (このお仕事を始めてから使ったツールを累計すると XX 個!!?)
たくさん CAT ツールを使っていると、各ツールの個性や類似点見えてきて、なんだかおもしろいです。でも、裏を返せば 1 つのツールを使う期間が短いわけで、ツールを変えるたびに操作方法を確認しなきゃいけなくて作業負荷が大きいのが辛いのですけど。
というわけで、今年触れた CAT ツールをふんわりとまとめてみました。
デスクトップ CAT ツール
Trados をはじめとする、PC のデスクトップにインストールして使用する CAT ツール。機能全部載せ! といえるものが多く、ツールを重用している翻訳者としては指定されると嬉しいです。お値段や操作性から初めての人にはとっつきにくいこともある模様。
どちらかといえば翻訳会社が使う管理機能 (ファイル形式変換、用語集作成、TM 解析など) がたくさんあるので、翻訳に詳しくないソースクライアントが翻訳会社にまるっとお任せしている案件で指定されることが多い印象。翻訳会社ごとに使う CAT ツールは大体決まっていて、それ以外のツールを指定されると、どうでもいいことではありますが、ソースクライアントの指示かな? 元請け翻訳会社の好みかな? とか思ってしまいます。
機能が多い分、操作を覚えるには時間がかかります。が、1 つのツールに習熟すれば、別のデスクトップ ツールを使うとき、あのツールにあったあの機能がこのツールにもあるはず! と勘を働かせられるようになります。
TM のインポート/エクスポート機能、参照 TM の指定機能、各種ファイル形式への変換機能なども標準装備なので、他の翻訳ツールとの併用や過去の翻訳資産の活用が容易なのも Good。
デスクトップ ツールは大体同じ機能が用意されているので、互いに代替可能。翻訳会社から指定されるツールがいずれであれ、確立した翻訳プロセスや品質保証プロセスをほとんど変更する必要がないのがよいところです。
とはいえ、ツールごとにレイアウトや検索機能のクセなど相違点があるので、あまりコロコロと使用ツールを変えたくないですが。
クラウド CAT ツール
Web ブラウザーから使用するオンライン専用の CAT ツール。知名度があるのは Memsource の Web エディターや、最近サービスを終了した Google Translator Toolkit あたり?
指定される案件が個人的にここ 1 ~ 2 年増えました。翻訳専門家向けの難しそうなデスクトップ ツールより、直感的に操作できて翻訳資産を自社管理できる クラウド ツールを使いたいクライアントが増えているのかな、という気がします (本当はどうなんでしょう。クラウドだとコストが安い?)。中には、翻訳ツール専門の会社ではなく、ソースクライアントが自社開発したらしきツールも見られます。
クラウド ツールの機能は、ブラウザーで作業するせいか、翻訳作業に必要な最低限に絞られています。ものによっては TM の検索機能が弱かったり (曖昧検索できないなど)、QA 機能がなかったり。インターフェイスのレイアウトもさまざま。デスクトップ CAT ツールに慣れた身としては、とても物足りなさを感じます。
操作をできる限りシンプルにした方が、新しい翻訳者を受け入れるうえではよいのかもしれませんが、もはや TM に訳を蓄積する機能くらいしかなくて、Computer Assisted Translation (CAT) と呼んでいいのか悩むツールもあります。
デスクトップ ツールはどれも大体操作感は一緒なのに対して、クラウド ツールはそれぞれかなり特徴的。
私が触れたクラウド ツールにはいずれもファイルや TM のエクスポート機能がなかったので、足りない機能を翻訳者側で補うのが面倒です。ツールごとにクセを見極めて、翻訳プロセスや品質保証プロセスを柔軟に変えていく必要があります。
CAT ツールに QA 機能がなければ、翻訳会社からは QA をやってくれとは言われないのですが、本当にやらなくてよいのかは謎。翻訳会社側で QA を担うのか、QA をやらずにそのリスクを受容するのか…? 一応自前のツールで誤字、脱字、スタイルガイド、用語のチェックはやりますが…。
文句はいろいろありますが、ブラウザーですぐに作業を開始できるのは クラウドの大きな強みです。自宅でしていた作業を外出先でも簡単に続けることができますから。デスクトップ ツールだったら、PC を持ち歩くか、出先で PC を探してインストーラーをダウンロードするところから始めなければいけませんが、クラウド ツールだったらスマホやタブレットのブラウザーでも作業できるし、ツールの勝手なインストールが禁止されているネットカフェの PC でも OK です。機密性が高くて自宅でしか作業できない案件もけっこうあるけどね。
TM を使ったファイルの解析機能が弱いのも、ワードベースでお支払いを受ける身にはちょっとありがたかったりします。1 ファイルずつ 100% マッチかどうかくらいしか解析できない、Repetition の概念がないツールでは、デスクトップ ツールを使った解析よりもワード数が多めになるので!
各ツールの所感
ツール名は伏せています & 昨年以前に使ったツールに適宜入れ替えているものもあります。中には翻訳会社やソースクライアントが自社開発したと思しきツールもあって、どこと取引しているかばれちゃいますからね…。機能と感想もざっくりさせてます。使いこなせていないツールについては的外れなものもあるかも…。
ツール A
- デスクトップ ツール
- TM: オフライン
- 参照 TM 機能: あり
- 品質保証 (QA) 機能: あり
- 用語ベース機能: あり
- コメント機能: あり
翻訳の前処理や後処理に使える機能がたくさん。細かく翻訳作業用のオプションを調整できる。
ツール B
- デスクトップ ツール
- TM: オンライン (オフライン TM も指定可能)
- 参照 TM 機能: あり
- 品質保証 (QA) 機能: あり
- 用語ベース機能: あり
- コメント機能: あり
翻訳の前処理や後処理に使える機能がたくさん。チームでの翻訳に向く印象。
ツール C
- デスクトップ ツール
- TM: オンライン
- 参照 TM 機能: あり
- 品質保証 (QA) 機能: あり
- 用語ベース機能: あり
- コメント機能: なし
翻訳者が使わない翻訳会社向けの機能は別のツールとして提供されているので、シンプルなインターフェイス。
ツール D
- デスクトップ ツール
- TM: オンライン
- 参照 TM 機能: あり
- 品質保証 (QA) 機能: あり
- 用語ベース機能: あり
- コメント機能: あり
UI 翻訳に便利なスプレッドシート風インターフェイス。UI の ID、コンテキストなど、多数の関連情報を見やすく表示可能。
ツール E
- デスクトップ/クラウド ツール
- TM: オンライン
- 参照 TM 機能: あり
- 品質保証 (QA) 機能: あり
- 用語ベース機能: あり
- コメント機能: あり
デスクトップとクラウドの両方で使えて便利。
ツール F
- クラウド ツール
- TM: オンライン
- 参照 TM 機能: あり
- 品質保証 (QA) 機能: あり
- 用語ベース機能: あり
- コメント機能: なし
デスクトップ ツールに近い使い心地。
ツール G
- クラウド ツール
- TM: オンライン
- 参照 TM 機能: なし
- 品質保証 (QA) 機能: あり
- 用語ベース機能: あり
- コメント機能: なし
とにかくシンプル。プラグインをインストールすれば、翻訳後の表示を動的に確認できるので Web サイトの翻訳に便利。
ツール H
- クラウド ツール
- TM: オンライン
- 参照 TM 機能: なし
- 品質保証 (QA) 機能: なし
- 用語ベース機能: あり
- コメント機能: あり
オンラインでレイアウトを確認しながら上書き風の翻訳が可能なので Web サイトの翻訳に便利。
ツール I
- クラウド ツール
- TM: オンライン
- 参照 TM 機能: なし
- 品質保証 (QA) 機能: なし
- 用語ベース機能: あり
- コメント機能: あり
シンプル。チームでの翻訳に向く印象。