もはある日記

岡山県の西端で、英日翻訳をしています。ここに「も」ステキなもの「は」いっぱい「ある」よ!

読書:『カードゲームで本当に強くなる考え方』

今回読んだ本はこれ。

カードゲームで本当に強くなる考え方 (ちくまプリマー新書)

TCG (トレーディングカードゲーム) やボードゲームが好きで、強くなりたいと思って手に取ったのだけど、他のこと (仕事など) にも応用が利く内容もあって面白かったので、個人的に良かった内容をメモがてらご紹介。

敗者のゲーム/勝者のゲーム

ゲームで強くなるには、大きく分けて「敗者のゲーム」と「勝者のゲーム」の2段階がある (投資家のチャールズ・エリスがアマチュアテニスとプロテニスを例に導入した概念)。

 

マチュアテニスは敗者のゲーム:負ける方のプレイヤーがミスをすることによってゲームが決まる

プロテニスは勝者のゲーム:プロ同士はお互いにミスをほとんどしないため、積極的に得点を取りに行った方が勝つ

 

仕事に喩えれば、前者は仕事の基本を身に付ける新人の段階で、後者は中堅以降――いかに顧客 (取引先や自分の上司など) を満足させられるかが重要――ということになろうか。

心理の大切さ

相手の行動を読むためでもあるが、なによりも自分自身をよく知るため。誤った判断を下してしまう原因となる様々な心理バイアスを知るべし。実力不足を運のせいにしてしまい、上達のチャンスを逃すことも起きがち。

ミスをなくすには?

ミスは永遠になくならない。練習をしてミスを減らすのも、最初のうちはよいが、ある時点からなかなか減らなくなる。

 

この辺は、仕事のミスを減らす話に似ている。わかりやすいミスはすぐになくせる (再発防止策を用意できる) が、ごく限られた条件で起きるミスは検知したり、対策したりが難しかったりする。

 

ではどうするか?ミスが起こった後のリカバリーをどうするか?

チームを組む

カードゲームは基本的に個人競技だが、チームで練習するとメリットがある。

他人のプレイを観ながら議論すると、自分の対戦中では気付かなかいことも見えてくる (自分のプレイ中はプレイに意識が集中するため、思考リソースに余裕がない)。

 

翻訳 (私の仕事) も個人プレイ要素が強いが、複数人でやる勉強会で意見を交わすことで自分になかった視点に気付くことはよくあるし、他人の翻訳をレビューすると粗が見つかるというのもお互いの視点が違うからだろう (心理的な理由でベストな翻訳が選べないメカニズムなども知っておくと、イマイチな翻訳に出会ったときにイライラしすぎなくてよい)。

言語化の効用

最近「言語化」という言葉をよく聞きくけれど、「言語化」といってもその指す内容は「頭で考えていることを相手に伝わるようにうまく表現する」「明確な言葉でコミュニケーションをとる (察してもらおうとすると誤解を招くぞ!)」とかバラバラでだったりする。

本書で言う言語化は、考えていることを言葉にすること (それを受け取る相手がいる、いないは問わない)。それが思考の整理や加速につながる。

ある戦略を思いついたとき、それを言葉で書きだして命題にしてみると、それが正しいのか、誤っているのか、他の命題と矛盾がないか、検証することができ、PDCA を高速で回せるようになる、って感じかな。

 

翻訳業務でも似たようなことがあり、ある原文の解釈が難しくて、その訳文について「こういった理由でこう解釈したのですが…」と半ばエクスキューズのような申し送りを書くことがあるのだが、書いている途中でこう解釈すればいいんだ、とピンとくることもある。思考が整理されているな、と感じる瞬間。

 

ある文 (あらゆる文) を翻訳するにあたり、「いろいろ考えられる翻訳のバリエーションの中からどうしてその訳にしたのか」という質問 (実際に聞かれることはまずないが) に対してきちんと答えを用意 (翻訳プロセスを言語化) して翻訳するというのが理想であり、実際、上手だなという翻訳者さんはそうやってるんだよなぁ。