もはある日記

岡山県の西端で、英日翻訳をしています。ここに「も」ステキなもの「は」いっぱい「ある」よ!

読書: 『司書が書く 図書館員のおすすめ本』

今回読んだのはこれ。

『司書が書く 図書館員のおすすめ本』

新聞や雑誌で見かける書評の執筆者は、その本に関する分野の専門家や、書評掲載媒体の編集者や本の著者と縁がある人が多く、言ってしまえば、「利害関係のある人」。書店員が書く書評や POP も、商売的な動機から、「売りたい!」という思惑が透けて見える。一方で、司書は、著者、出版社、書店などから一定の距離を置いた、公正な立場から書評を書けるのが強み、とのこと。

司書が書いた書評はほとんど読んだことがないけれど、どんな書評ができるのか?と興味を持った。

 

実際の書評が気になる方は本書を読んでもらうとして、全体的に司書の書評に独特だったのは「書評の読者設定」(と、その読者にお勧めする理由)だ。

本書に掲載されている書評の読者には、まず「他館の司書」がいる。他館の司書を読者に想定した書評では、その本を読んで司書の業務に関する気付きがあったとか、その本を図書館に入れることで利用者のこんな機能を強化できるとか、司書が考えていることを知れて興味深い。

次に、「自館の利用者」だ。図書館のある地域に関する資料や、中高生のために学校図書館に備えておきたい資料などを紹介する。その館独自のニーズや、この館  (特に、学校図書館?) の利用者にはこの本を必要とする人がいる、というのが垣間見える。

最後に、司書にも利用者にも限定しない、幅広い読者向けの書評がある。新聞や雑誌に載っている書評と同じような読者が想定される。時事や流行に絡めて本が紹介されるので、つい、読みたくなってしまう。

 

本書の大半のページは書評に割かれているが、司書が書評を書くという「図書紹介事業」が始まった経緯の紹介や、事業の資料も付いている。

個人的に参考になったのが、「おすすめ本ができるまで」という、本書に掲載されている書評の初稿とそれに対する修正案が載っているページ。他人の文章を読んで修正案を出すというのは、うまく伝えないと相手をムッとさせてしまうもの。私も仕事で他の人の文章に手を入れなければならないことがあるので、いつも伝え方に悩んでいるのです。他の人が修正案を伝えている方法はなかなか見る機会がなく、参考になりました。